国分チエミさんのホームページへぜひ訪問してみて下さい。
いままで国分さんが手がけた装幀画や雑誌の挿絵等のお仕事を見ることができます。
とっても素敵ですよ!
 

管理者からのメッセージ

平成20年5月、表参道にあるHBギャラリーで国分さんの個展「Forest」が開催された。既に国分さんとは前年に一度お会いしていたが、原画を間近で鑑賞できる機会なので、ぜひお伺いしたいと思い心弾ませながら会場へお邪魔した。作品はどれも期待していた以上に素晴らしいものであった。何が素晴らしい?と聞かれたら、いくつか述べることは出来る。しかし、原画を実際に見た人にしか分からない、心の奥に感じる感覚は言葉で伝えることは難しい。私は、イラストは見た瞬間に感じる印象や雰囲気が大事だと思っていた。しかし、私は国分さんの作品に積層された時間と奥深さを感じた。ずっと見ていても飽きない何かを持っている作品だと感じた。この日はお忙しい中打合せまでさせていただき、ギャラリーを後にした。開発が始まったばかりでまだはっきり姿を現していない商品の誕生を心に誓いながら。
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平成20年8月新潟三越で開催された「作家生活50周年 源氏物語千年紀記念 生きることは愛すること 瀬戸内寂聴展」に行った私は丁度開催期間中、家内と新潟へ遊びに行く予定になっていて、三越で寂聴展が開催されていることをたまたま知り、幸運にも見ることが出来たのだった。寂聴さんについてあまり詳しくなかった私は、作品や写真をじっくり見て歩いていたのだが、著書を紹介するコーナーで突然国分さんの原画に遭遇。あまりの素晴らしさに心の中で「わぁ。すごい!」と叫んでいた。展示されていた原画は、話題になった瀬戸内寂聴訳「源氏物語」の文庫版のカバーデザインに採用されたものであった。原画は印刷で見るのとまったく違って、絵の具の鮮やかな色彩、丁寧に塗り重ねなれた表面の質感、そして何より国分さんがそれぞれの絵に込めた心と時間の積層を感じることが出来た。また、カバーでは原画の一部分がクローズアップされてレイアウトされているのだが、今回、原画の全体を鑑賞することができて、背景とモチーフのバランスが素晴らしくモチーフの流れがとてもエレガントであることが分かった。機会があればぜひもう一度鑑賞させていただきたいと思っている。

平成19年10月、私から国分さんへ送信させていただいた「突然失礼します」というメールから約1年半。ようやく「ことりの玉手箱」を発売することができた。
国分さんには心から感謝している。
新しいブランド「ebaco」では、これからも出来る限りクリエーター国分チエミとしての感性を大事にして、作品づくりを行っていきたいと考えている。そうすることで誕生した作品はその内面にストーリーを感じることができ、唯一無二の存在になることができると思う。
ここ数年間で地場産業のものづくりを取り巻く環境は激変した。それに伴い商品開発も新たな道が模索され始めており、異素材間の融合やプロダクトデザイナーとの商品開発などのプロジェクトが各産地で行われている。
しかし、その多くは絵柄や装飾よりは、素材、フォルム、機能性に目を向けて開発されているようだ。またここ数年の傾向として、素材感を生かしたものや、無地でフォルムがシンプルなプロダクトやインテリアが日本のマーケットでは求められている。
実は私も数年来、漆器に絵を付けるのを避けていた、というか躊躇していた。絵を付けることによって、その商品がある特定のイメージを持たれてしまうことを恐れていたためだ。このサイトで紹介している弊社オリジナル「Private Style」シリーズの商品群にはあえて絵を付けていない。インテリアの一部として溶け込んで欲しいという願いからだ。
しかし、私は以前から絵柄はとても大事なものだと考えている。絵柄によってモノにメッセージを込めることができ、人とコミュニケーションができるのである。これは日常の生活に欠かせない要素ではないかと感じている。しかしながら現実は、作り手も使い手も塗物に付けられている従来の絵柄のデザインに対して閉塞感を感じている。
そこで私は二つの方向で模索したいと思っている。一つは伝統的な絵柄のモチーフをリデザインし、そこに込められている意味やメッセージを使い手に丁寧に伝えることができないか、ということ。そしてもうひとつが、伝統的な絵柄デザインにこだわらない全く新しいイメージとメッセージを絵柄に込めて塗物をつくれないか、ということだ。後者については、一人のアーティストの世界観が漆器に濃密に表現された時、単なる商品という域を超え、メッセンジャーとして使い手の心に飛び込んで来るのではないかと思っている。もちろんアーチストの個性によって共感を感じる使い手の数は違ってくるが、「せまく強く」という方向性も大事なことだと思う。

イラストレーターである国分さんの立場から「ことりの玉手箱」の商品開発を見てみると、戸惑いの連続であったと言える。私がイラストレーターという職業について勉強不足だったのが大きな原因である。しかしながら、国分さんはイラストレーターという枠を超えて課題の一つ一つに丁寧に対応され、結果的に小さいながらも国分さんの世界観が感じられる存在感のある作品が完成した。私の使命は、この生まれたばかりの作品をできるだけ多くの人に手にとってもらい、「ebaco」というブランドと国分チエミというアーティストのファンをつくることである。